近年、国内の物流の基盤を支えている運送業は非常に需要が高まっています。どんなに不景気になっても物流は途絶えることがないため、安定した業種と言えるでしょう。
しかしながら、中小企業、個人事業で運送業を営んでいる方の中では、受注があるのにも関わらず、資金繰りが滞ってしまうという経営者も少なくありません。
最初になぜ、運送業界の資金繰りが厳しくなるのか、その理由について見ていきましょう。
運送業は他業種比べ、支払いサイトを長くとっている傾向にあります。支払いサイトとは、締日から入金がある期間のことを差します。
他の業種は締日から30日後などに入金がある中で、運送業は締日から翌々月、つまり2ヶ月後に入金というように支払いサイトが長く、資金繰りが滞ってしまう業者もあるようです。
わかりやすく、インターネット通販の配達を一例にあげます。
インターネット通販が広まっている現在、受注から実際に支払いを受けるまでの期間が長い傾向にあります。インターネット通販の利用者は、基本的に商品を受け取った後の引き落としや、コンビニ決済で支払いをするのが主流になっています。そこでも支払いにタイムラグがある中、さらに通販サイトから入金があるのはもっと先。中には、受注から入金まで数ヶ月待つということも少なくありません。こうして支払いサイトが長くなり、資金繰りを圧迫してしまう、というケースがあります。
運送業界の課題として、人手不足や人件費の削減が難しいことが挙げられます。運送業の需要が高まるにつれ、人手に大きな変動がないものの、仕事量が増えていることに原因があります。
ドライバーの人材確保が厳しく、徐々にドライバーの高齢化も進んできています。従業員の高齢化につれ人件費も削減しにくく、金を引き上げることで退職を引き留めたり、新しく募集をする際も賃金水準を上げて人材を確保するなど、人件費の高騰は避けられるものではありません。
運送業は他業種に比べて新規参入しやすい業種の一つです。法改正や規制緩和が行われ、一人で始められる「貨物軽自動車運送事業」での立ち上げも簡単にできるようになりました。個人事業でも比較的簡単に経営することができることから、運送業の新規参入も増えてきています。
新規参入が多くなると競合他社が増えることになり、その分の対策としてサービスの向上や、価格を下げることで自社を選んでもらうという経営方針で受注を上げる、という事業者も少なくありません。
しかしながら、競合するための価格競争や過剰サービスにより、受注は増えても自社の利益率を下げてしまうというケースもあり、資金繰りが厳しくなる原因の一つにもなりえます。
インターネット通販の拡大や再配達の制度により、以前よりも受注が増えている中に加えて、繁忙期があります。一般的に運送業界は年末年始、引っ越しシーズン、冬季・夏季が忙しい時期にあたります。
この時期は燃料費以外にも多くの支出がある時期になり、支払いサイトが長い運送業にとっては資金繰りに悩む場面にぶつかることも考えられます。
繁忙期は多い受注の中、トラックや人材の確保が必要になる業者も少なくありません。その際にも資金が必要になり、まとまった現金を用意しなければいけません。
ですが、来る繁忙期に備えたにもかかわらず、予想より受注が少なかったというケースもあります。これは上記で話したように、価格競争などにより競合他社に受注を取られてしまったなどという想定外の事態です。受注がない場合でも、雇った人材の人件費、トラックの維持費はなかったことにはできず、結局は資金が多く必要になります。
運送業を経営していくにあたり、運行の安全の確保は最重要事項にあがります。車両の点検や整備、ドライブレコーダーを筆頭とするトラブルの防止も必須事項にもなり、安全のために使う経費も必要になってきます。
日頃から整備、点検を行っていても事故やトラブルのリスクは0にはなりません。もし車両故障してしまった場合、修理費用が必要になります。特にトラブルも事故になってしまうと、経営状況も一気に悪化してしまうことも。
ドライブレコーダーの参入も一つ、安全のための支出はこれから先も増えていくと考えます。